既存エンタメ・メディアの先入観に囚われず、音声メディアの可能性や課題に関し、スマートかつビビットな視点で言及・選考ができる感性を持つ方に、選考委員をお願いしています。
  • 石井 玄 
    株式会社ニッポン放送 エンターテインメント開発部 プロデューサー
    1986年、埼玉県生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、東放学園専門学校を経て、2011年にサウンドマン(現・ミックスゾーン)入社し主に深夜ラジオ番組の制作を担当。2020年ニッポン放送入社。イベントやグッズなど、様々なエンタメ・コンテンツのプロデュースを担当している。2021年9月初のエッセイ「アフタートーク」を刊行。
大賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
  • 今まで聴いたことがない音声コンテンツです。初めて聴いた時、衝撃を受けました。この発想はできないし、もしできたとしても実行できないです。文句なく現在のNo.1だと思います。経験したことのない音声体験なので、是非多くの人に聴いていただきたいです。制作者の信念と努力を随所に感じられて、ジャンルは違えど、非常に刺激になりました。 パーソナリティは存在しない。強いて言えば、日本の社会全体、そして聴き手であるはずの自分自身だと思います。
  • 2. 奇奇怪怪明解辞典
  • 二人のトーンが心地よいです。内容も共感を呼ぶものが多く、聴いていて嫌な気分にならないです。
    ポッドキャストとしての利点である、表現の自由さと許容する範囲の広さを遺憾なく発揮していて、地上波ラジオとの差異をしっかりと感じました。 
  • 3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 春風亭一之輔師匠の心地よい語り口と音使いによって終始退屈させないようにできています。物語を想像しながら聴くと時間を忘れて楽しめます。学びもあり、音として楽しめる、ポッドキャストの代表例のような作品だと思います。途中ブレイクがなければもっと没入できるので、その点で、3位とさせていただきました。
  • 総評:
  • JAPAN PODCAST AWARDSには一回目から携わらせていただいておりますが、毎年格段にレベルが上がっていることに、音声メディアの盛り上がりを感じています。前回は放送局の本格参入がありましたが、今回はAmazon、Spotifyのような放送局とは別のプラットフォームのコンテンツが増えました。テレビ東京のような映像を制作するクリエイターもポッドキャストを制作するような盛り上がりを見せて嬉しい反面、ラジオ局の人間としては焦りも感じます。ノミネートに間に合わなかったですが、Amazonオーディブルのポッドキャストは昨年暮れからポッドキャストを多数発表していて、今まさに群雄割拠、百花繚乱のポッドキャスト業界となっていると感じています。私もAmazonオーディブルで「佐藤と若林の3600」「HIDEO KOJIMA’S RADIOVERSE」「オークラ 質問のコメディ」などのポッドキャストの制作を始めていて、来年のアワードに参加したい気持ちに駆られています。(選考員の関わるポッドキャストは選考外だそうです)
    とにかく、ポッドキャスト・ラジオを含めた音声メディアの盛り上がりを実感できて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。これから面白い音声コンテンツがもっと増えるように、リスナーとして聴きながら、自分でもポッドキャストを制作していきたいです。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 奇奇怪怪明解辞典
    2. ゲイと女の5点ラジオ
    3. 月曜トッキンマッシュ
  • 総評:
  • パーソリティ部門は、そのパーソナリティが魅力的に感じるかで選考させていただきました。
    1位の「奇奇怪怪明解辞典」
    二人の関係性の良さが滲み出ていて、聴いていて楽しいです。ミュージシャンという立場ではありますが、庶民的で親しみやすく、言葉に嘘がない印象を受けました。ああ、この二人と友達になりたいな、と思わせてくれるところにパーソナリティとしての魅力を感じます。
    2位の「ゲイと女の5点ラジオ」
    顔もわからなく、聴いただけですが、好きになりました。一緒に飲みに行ったら超楽しそうです。そう思わせることが、パーソナリティとしての魅力だと思います。
    3位の「月曜トッキンマッシュ」
    声がいいです。面白そうに聞こえる声です。全く知らない人だけど、好感がもてて、仲が良いことが伝わってきて。プロの喋り手が増えてきている中で、これぞポッドキャストのパーソナリティという感じが良いです。楽しそうでポッドキャストが好きなことも伝わりました。
ベスト エンタメ賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
    2. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
    3. あなたから聴く物語
  • 総評:
  • 1位と2位は大賞で言及していますので、割愛します。
    エンタメ性も優れた2作品だと思います。
    3位の「あなたから聴く物語」
    物語が電話音声のみで構成される斬新で実験的な内容ですが、構成が巧みで、短い時間で想像できることができます。一話が短いので、一気に聴くことも可能。地上波ラジオで実施しにくい企画ですが、ポッドキャストであれば、配信時間を自由に設定できる優位性も活かされています。あと、ビジュアル(イラスト)がポップでかわいいです。
ベスト コメディ賞
  • 1. 真空ジェシカのラジオ父ちゃん
    2. 83 Lightning Catapult
    3. 蛙亭のトノサマラジオ
  • 総評:
  • ノミネート作品全て面白いので選ぶのが難しかったです。
    面白さで選んだというよりはただただ好きなのを選びました。
    1位の「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」
    冒頭のつかみでもっていかれました。面白くてその部分だけ全部の回聴きました。そういう聞き方ができるのもポッドキャストの魅力だと思います。そこだけのまとめ作ってほしいです。
    2位の「83 Lightning Catapult」
    地上波で長くパーソリティを務めているお二人だけあって安定感が抜群です。心なしか地上波よりも、のびのびやってる気がしました。構成作家の福田さんとのコンビネーションも良くて常に聴いていられる番組だと思います。それぞれディレクターとして担当をしていたお二人の番組ですが、客観的に聴いて面白いと思います。ソリティを務めているお二人だけあって安定感が抜群です。心なしか地上波よりも、のびのびやってる気がしました。構成作家の福田さんとのコンビネーションも良くて常に聴いていられる番組だと思います。それぞれディレクター担当をしていたお二人の番組ですが、客観的に聴いて面白いと思います。
    3位の「オールナイトニッポンPODCAST 蛙亭のトノサマラジオ」
    お二人の声のコントラストが良いです。中野さんは何言っても面白く聴こえる声で、大きい声を出すだけで笑ってしまいます。イワクラさんの独特な視点からのトークも聴けば聴くほどクセになると思います。
  • 奥森 皐月 
    女優/モデル/タレント
    2004年生まれ、東京都出身。タレント。お笑い好きを活かしカルチャー誌のサイトでコラム連載も執筆。テレ朝動画logirlにて冠番組「奥森皐月の公私混同」好評配信中。NHK Eテレ「すイエんサー」、「にほんごであそぼ」出演中。多彩な趣味の中でも特にお笑い好きで、毎月150本のネタを鑑賞、毎週30時間程度のラジオ番組を愛聴している。
大賞
  • 1. ゆる言語学ラジオ
  • 取っ付き難いテーマをエンタメとして手軽に楽しめます。紹介されている書籍を読みたくさせる、魅力的な話し方と分かりやすい解説でとてもおもしろいです。
  • 2. BUSINESS WARS /ビジネスウォーズ
  • サクセスストーリーがどれもドラマチックで聴き応えがあります。春風亭一之輔さんの声が耳心地よく、展開には緊迫感があるので次々と聴きたくなりました。
  • 3. 奇奇怪怪明解辞典
  • 真面目なテーマからどうでもいいことまで、興味関心の幅が広い二人。1つの話題に対し音楽からアプローチして考える場面の独自性が魅力的でした。
  • 総評:
  • Podcastらしさのある、専門性とユーモアが詰め込まれた作品が多く、聴いていてとても楽しいです。
    上位の作品は特に、今後も引き続き聴きたいと思いました。今まで出会えていなかったのが悔しいくらいです。過去のエピソードを遡って聴くことに決めました。

    ゆる言語学ラジオ「ピダハン」の回は、未知の異文化と遭遇するワクワク感が最高でした。常識や当たり前を覆すような考え方を、きちんと噛み砕きながら受け入れる姿勢が素敵です。

    「BUSINESS WARS /ビジネスウォーズ」の作品のスタイルは新しさがあり、各のエピソードの聴きごたえがすさまじい。1つ聴き始めたらすぐに続きが聴きたくなる、やみつきになる作品です。

    氷川きよしさんの素の部分や考え方が垣間見える「氷川きよし kiiのおかえりごはん」もおもしろかったです。料理とラジオの相性があまり良くないのではないかと思っていましたが、聴いていて楽しめる番組になっていました。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 叶姉妹のファビュラスワールド
    2. ゲイと女の5点ラジオ
    3. 奇奇怪怪明解辞典
  • 総評:
  • 「叶姉妹のファビュラスワールド」は、叶姉妹さんの魅力・優しさ・強さが詰まっていて本当に素晴らしいです。お便りに対する真摯な向き合い方、的確な指摘、リスナーに新しい価値観を見出してくれるバイタリティー。どこを取っても唯一無二で、最高としか言いようがありません。

    「ゲイと女の5点ラジオ」のパーソナリティお二人は、確固たる考えや生きるスタイルがあるようで素敵だと思いました。しかし、自分の考えをすべてにせず「偏見」と「意見」を区別してお話されているように感じます。本質的な多様性を具現しているような、よい組み合わせの二人のトークはとても聴きごたえがありました。

    ノミネートにあった「月曜マッキントッシュ」も、パーソナリティお二人の息の合った掛け合い、トークが聴き心地がよく、とてもおもしろかったです。

    視覚情報がないからこそ見えてくる、パーソナリティの思考や生き様。それがよく伝わり魅力に感じた作品を選びました。
ベスト エンタメ賞
  • 1. ロバートpresents聴くコント番組〜続・秋山第一ビルヂング〜
    2. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
    3. あなたから聴く物語
  • 総評:
  • ロバートの聴くコント番組。視覚的な面白さを奪われると、魅力が半減するのではないかと思った私が大間違いでした。音声だけだからこそ、その創造性と破壊力の凄まじさが増幅しています。新たなお笑いの世界を提示されているようで、圧倒的なおもしろさを感じます。エピソードがまるまる一つのコントになっている、という部分も今までにあまり聴いたことがなかったので感動しました。

    「BUSINESS WARS/ビジネスウォーズ」エピソード一つの情報量が多いですが、それを音声としてわかりやすくまとめ、きちんとエンタメに昇華されていて楽しいです。映像媒体で見て楽しむのとは違うであろうおもしろさがあると感じました。

    「あなたから聴く物語」は雰囲気のドラマチックさとおもしろおかしい内容のギャップが良かったです。音声媒体の強みをきちんと活かした劇的な演出が施されているのに、1話が5分足らずで終わるというまとまりに魅力を感じました。

    情景を視覚的に伝えられないという弱みをむしろ強みに活かしている作品こそが、Podcastにおける優れたエンターテインメントなのだと感じ選考しました。
ベスト コメディ賞
  • 1. 真空ジェシカのラジオ父ちゃん
    2. 83 Lightning Catapult
    3. 蛙亭のトノサマラジオ
  • 総評:
  • 「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」は、他のお笑いラジオとは少し違った空気を纏い、真空ジェシカのカラーが色濃く現れたお笑いでとてもおもしろいです。メールに対するリアクションも、独自性に溢れていてラジオ父ちゃんでしか味わえない魅力があります。リスナーから募集していて、毎週送られてくるジングルも秀逸で素晴らしいです。

    「83 Lightning Catapult」のゆるさと同級生としての距離感はラジオ好きにはたまらないものがあります。相田さんと酒井さんの良さが双方に引き出されていて、コンビネーションの良さが聴いていて楽しいです。長年ラジオ〜パーソナリティをされているお二人なだけあり、メール読みとリアクションの安定感も心地いい。

    「蛙亭のトノサマラジオ」は、とにかくトークがおもしろいです。岩倉さんと中野さんの人間性がよく伝わってくる上、お二人のキャラクターの違いによる掛け合いが最高。つい笑ってしまう話ばかりで、一度聴くと毎週聴きたくなるような魅力を感じます。

    コメディ番組の中にもおもしろさの中にある聴き心地の良さや、パーソナリティの魅力、独自性など、様々な要素があり、それらが調和されている作品が優れているのではないかと感じました。
  • 佐久間 宣行 
    テレビプロデューサー
    1999年テレビ東京に入社。『TVチャンピオン』などで経験を積みながら、入社3年目に異例の早さでプロデューサーとして抜擢される。『ゴッドタン』のプロデュース・総合演出をつとめるほか、『ピラメキーノ』『キングちゃん』『ウレロ☆未確認少女』『有吉のバカだけどニュースはじめました』テレビ東京開局50周年記念企画『トーキョーライブ24時〜ジャニーズが生で悩み解決できるの!?』などのプロデュースを担当。2021年3月にテレビ東京を退社後、フリーランスとして活躍。
大賞
  • 1. 氷川きよし kiiのおかえりごはん
  • ごはんづくりの形を借りた、自分語りとてつもなくいい。終始心の開かれたヴァイブスに泣きそうになる。
  • 2. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
  • 音声だけのほうが取材ハードルが下がるという利点を最大限活かしている。
  • 3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 単純にドキュメントとして面白い演者・音楽・演出ともクオリティが高い
  • 総評:
  • どれもとても面白かったです。

    バラエティに富んでいて、Podcast文化の成熟も感じました。
    その中で、氷川きよしさんの番組は、ハッキリ覚悟と人生があって、しかも開かれた魅力もある。
    声の魅力と相まって、聞いていて胸が熱くなった。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. ゲイと女の5点ラジオ
    2. 叶姉妹のファビュラスワールド
    3. 超相対性理論
  • 総評:
  • 「叶姉妹のファビュラスワールド」は、叶姉妹の2人が質問に対してめちゃくちゃ誠実、その上でキャラクターとしての笑いもある素晴らしい番組だと思いました。

    けれど、ここで初めて知った「ゲイと女の5点ラジオ」の魅力にやられました。
    会話のテンポと悪口のセンスがすごくいいですね。面白い。
    しかも、そこにちゃんと社会への怒りと問題提起もある。
    とても素敵でした。
ベスト エンタメ賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
    2. あなたから聴く物語
    3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 総評:
  • 「あなたから聴く物語」は童話のツッコミどころを笑いにするだけでなく、価値観の分断と決めつけという今日的なテーマに消化できていると思う。ただ、アプリで映像付きのほうが世界観も含め完成度が高く感じてしまった。

    そのなかで、ハイパーハードボイルドは、音声のみだからできる取材、というアプローチが非常に面白いと思う。しかしこれも、過去に上出ディレクターが作った映像版のほうが、圧倒的に面白いと感じてしまったのは事実だ。
ベスト コメディ賞
  • 1. 83 Lightning Catapult
    2. 蛙亭のトノサマラジオ
    3. ラランドの声溜めラジオ
  • 総評:
  • これが一番難しかったです。

    若手のドキュメント感もとても魅力的でしたが、この番組じゃないとだめ、までは消化できてない感じがしました。たくさん露出してますし。

    その中でやはり、「83 Lightning Catapult」の2人には音声メディアへの一日の長がありました。
    遊び方が非常にうまいですし、カリスマ性もありますね。彼らがやっているラジオとは違う顔をちゃんと出せているので、スタッフワークも含めすごくいいと思います。
  • 櫻本 真理 
    cotree/CoachEd CEO
    1982年生まれ。京都大学教育学部卒業。モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(株式アナリスト)を経て、2014年にオンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotree、2020年にリーダー層向けコーチングプログラムを提供する株式会社コーチェットを設立し、両者の代表取締役を勤める。ウーマン・オブ・ザ・イヤー2022心の揺らぎサポート賞受賞。
大賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート
  • 聴いたことのなかったリアルな「声」と「生き方」がすぐ隣に感じられて、世界の見え方が変わっていく感覚があり、聴き流すことを難しく感じました。
  • 2. 奇奇怪怪明解事典
  • 軽快な語りの中に、豊かな受容と鋭い投げかけが溢れて広がって重なっていく様子が心地よかったです。笑いもあり、心がゆるむ感覚がありました。  
  • 3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 映画を見ているかのような臨場感と、「よそいきの世界」の今まで見えていなかった裏側を垣間見るような高揚感がありました。もっとたくさんの作品をお聞きしたいなと感じました。 
  • 総評:
  • どの作品も単に「文字で読むかわりに耳で聴く」「映像の劣化版として耳で聴く」ということとはかけ離れた、音でなければ伝わらない質感やテンポが際立ったものばかりでした。
    聴いていて心地よいだけでなく、自分の世界を少しずつ拡張してくれるような体験をさせていただき、感情を揺さぶられることも多く、音の作品の可能性と進化を感じました。出会えたことに感謝の気持ちが芽生える作品ばかりで、耳から聴く体験の豊かさに改めて気付かされました。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 叶姉妹のファビュラスワールド
    2. 奇奇怪怪明解辞典
    3. 超相対性理論
  • 総評:
  • パーソナリティ自身の個性が魅力としてひとつひとつの作品に現れており、ずっと聴いていると脳内に「このパーソナリティならこう言うのではないか」という妄想が膨らむような、お人柄と語り口に一貫性のある点が素晴らしく、安心して委ねられるという意味での信頼感がある作品が多かったです。
ベスト ナレッジ賞
  • 1. a scope ~リベラルアーツで世界を視る目が変わる ~
    2. ゆる言語学ラジオ
    3. DOMMUNE RADIOPEDIA
  • 総評:
  • 近寄りがたい分野に関する知恵をとても身近に感じられ、具体的な事象とそこから生まれる学びとの行ったり来たりが楽しくなるような作品ばかりでした。どの作品も問いの切り口が豊かで、対話によってさらに知恵が深まっていくことにワクワクしながら聴かせていただきました。
ベスト ウェルビーイング賞
  • 1. 山あり谷あり放送室
    2. ホントのコイズミさん
    3. Temple Morning Radio
  • 総評:
  • ほかのジャンルの作品では、どれほど感情が動いたか・どれだけ世界が広がったか、という観点からお聴きすることが多かったのですが、このジャンルでは、むしろ話の内容や言葉選び・声のトーンによって、「エネルギーが落ち着くもの」「大切なものが浮かび上がってくるようなもの」を選ばせていただきました。少し自分と離れることができ、呼吸が深まるような作品が多かったように感じます。
  • 竹中 直純 
    プログラマ/起業家
    1968年福井県敦賀市生まれ。90年代前半のインターネット黎明期からさまざまなサービスを企画、設計、開発するプログラマ、起業家。現在は技術開発を本業とするディジティ・ミニミ社をベースに、OTOTOY、BCCKS、未来検索ブラジル社でいずれもプラットフォームサービスを運営しつつ各種開発も手掛ける。砂原良徳、國崎晋と共に音楽を楽しむ環境を見直すPodcast番組"Operation Sound Recovery"のホストも務める。
大賞
  • 1. ゆる言語学ラジオ
  • 楽しそうにしゃべる二人(Mr.Horimoto含)の興味が聴き手の頭にするすると流れ込んでくるような感覚がある。「た」の分析など、普段使っている母国語に唸るような発見があり頭が掻き回される。
  • 2. 奇奇怪怪明解辞典
  • 名前のついてない行為に名前をつける流れがTITAN氏の独特な言語感覚で独特のスリルを産んでいる。途中のエピソード(ep.27?)からBGMがなくなる必然感。 
  • 3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 専門的な知識や用語についても臆することなく説明し切る聴取者を信じる作りが好ましい。仮に解らない事があっても調べたくなる。
  • 総評:
  • 今回の大賞については、どちらかというと知的好奇心を刺激されて頭が学習モードに切り替わり、内容を頭に詰め込まれるようなノミニーばかりで、ひとつだけ「kiiのおかえりごはん」だけがモードが異なるものでした。そんなわけでとても悩んだのですが、結果としては如何に中長期的にリスナーが知的な拡張を味わえるか、を観点に選んだことになると思います。Podcastはラジオ番組に例えられることの多い状況の中で、このような高密度な番組がもし昔のようにアーカイヴにならず一期一会なら、やたら難しい内容だったという印象のみが残るだけなのかもしれないのですが、今はradikoも含めて何回でも番組を聴き直す環境があり、その環境を前提に番組を作る事ができるため、我々はこんなに上質な思考や言説に何度でも触れる事ができる幸せを噛み締めています。Podcastはそのような点で書籍と同じような知の蓄積の側面を持つに至っていると強く思います。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. ゲイと女の5点ラジオ
    2. 超相対性理論
    3. 叶姉妹のファビュラスワールド
  • 総評:
  • パーソナリティの魅力とは何かを考えた末、主にテレビで培われたフォーマットの形式美とラジオの緩さのようなコントラストが話し手の心理状態に大きな影響を与えているということに気づきました。そして口上がある、区切りにSEを使っているなどといった番組の詳細な形式よりも、結局聴いている人たちについてどこまで想像ができケアできているかということが基準になると気づき、そのようなつもりで選出しています。

    「ゲイと女の5点ラジオ」はパーソナリティの二人がいろんな悩みを最終的には楽しさに変換する技能がすごい。いや技能といっていいのかな…なんなんだろう。声音とかリズムみたいなことなのか、適度な湿度感と引き出しの開き方が好ましいのかな。あと、冒頭にクライマックス(?)の音声を持ってくる形式は最後まで聴かせる手法として特に有効だと思いました。
    「超相対性理論」はパーソナリティが三名とも同世代で話題に関する共感や気づきが生々しく伝わってきます。さらに良い悪いの観点を排除して徹底的に目の前にあることを抽象化していく過程を順を追って見せてくれるので、まるで目の前に三人がいて聴いている側も同席して質問、会話したくなるような感覚に陥ることがあります。これはリスナー側へのケアを超越してリスナーとパーソナリティを同化させているということかもしれず、パーソナリティとしては大成功なんだと思います。
    「叶姉妹のファビュラスワールド」はどこを切り取っても叶姉妹を堪能でき、「叶姉妹」という様式美を堪能できるのだけど、時々ふいにそのフォーメーションが崩れることがあって、そこに素の二人が見えるので、(25時代に存在を知って23年になる)叶姉妹に初めて親しみを感じられるようになったという点で画期的な番組。
ベスト ナレッジ賞
  • 1. a scope ~リベラルアーツで世界を視る目が変わる ~
    2. NIKE LAB RADIO
    3. DOMMUNE RADIOPEDIA
  • 総評:
  • KNOWLEDGE(教養)と言われた時に個人的に感じるのはその言葉が示す範囲の広さで、そのような意味で内容の深さというよりは広さを優先して考えました。また聴く方もそこそこ覚醒しているという前提で受け取り方、聞こえ方の順番を決めています。

    「a scope」はタイトル通り、リベラルアーツを通して見える範囲を広げていくことが目的の番組で、考えを段階を踏んで次々と抽象化していき、必要に応じて具象に降りるという高度な知的活動のひとつの手本としてとても興味深く聴きました。いみじくも別部門のウェルビーイング文脈で語られるような仏教への言及があったり、知の構造に対する考察があったり、など深掘りし甲斐のある話題がどんどん出てきて参加したくなります。
    「NIKE LAB RADIO」は話し手が入れ替わることで知識の幅を広げるアプローチをとっていて、この形式であれば無限に面白い話を継続できて、かつ何を選ぶかについてNIKEの目利きがあるということがブランドを好きな人にとって心地よいものになっていて、そこにとても良い意味での安定感を感じて選出しました。渋谷の歴史のような内容は(渋谷在住の僕が周辺から聞いた話が補強されて)とても面白かったのですが、例えば同じような観点で(オリンピックつながりで)長野の歴史に置き換わったエピソードがあったとするとどういうふうに聞こえるのかが気になりました。
    「DOMMUNE RADIOPEDIA」は広さというより深さが印象に残る内容なのですがエピソードが多様でパーソナリティも多岐に渡り、かつリファレンス付きの知識をもとに感情を含む評論が展開されるので、知的満足度は高いです。けど、全部長いんですよね。それが3位の理由です。
ベスト ウェルビーイング賞
  • 1. ウェルビーイング〜旅する博士と落語するアナウンサー〜
    2. 山あり谷あり放送室
    3. Temple Morning Radio
  • 総評:
  • ウェルビーイングは定義によって揺らぎやすい言葉で、文脈上の意味を読み取ってからじゃないと判断がなかなか難しいのですが、このアワードの場合、その定義も揺らいだままメタ認知的に聴く必要があったのでなかなか苦しみました。

    全ての事象を問い直す態度から「良く在ること」がどんなことなのかをリスナーにイメージし直させる。人によってはそんな思考法や態度は面倒だなと思うかもしれないけど、その後二人の対話がエピソードを跨いで続いていくと、その内容の面白さから、根本から考え直すというその態度が好ましいものに思えてきて、聴く前とはまるで違う考え方をしている自分に気づくという体験ができるという意味で「ウェルビーイング〜旅する博士と落語するアナウンサー〜」を選出しました。この対話が書籍になるという多次元な展開も良いです。
    「山あり谷あり放送室」はどちらかというと世の中で色々起きていることに対してパーソナリティがポジティヴな反応をする受動の面白みを感じているのですが、その事に対してパーソナリティ達がどのように関わっていくのか、をとても能動的に考えていることがわかります。受動と能動のバランスがとても良くミックスされています。さらに山、谷のお二人が終始とても楽しそうなのが好ましく、選出しました。
    「Temple Morning Radio」は普段葬祭くらいでしか関わらない現代仏教について僧職のリアルな体験や思考をダイレクトに知る手がかりとなり、いわゆる「線香くさい」世界とは全く違ったイメージを新たに持つことができる貴重な番組ということで選出しました。加えて多様な読経を聴くことができるためサウンドとして聴いたときの面白さに気づくことができました。
  • 秀島 史香 
    DJ/ナレーター
    1975年、神奈川県茅ヶ崎市出身。慶應義塾大学在学中にデビュー。ラジオDJ、映画、TV、CMのナレーション、朗読、プラネタリウムや美術館の音声ガイド、JAL機内放送など、声の表現があるところで活動中。現在FMヨコハマ「SHONAN by the Sea」、JFN系各局「Pleaseテルミー!マニアックさん、いらっしゃ~い!」、テレビ東京「二軒目どうする?〜ツマミのハナシ〜」などに出演中。ニッポン放送『文豪ROCK!~眠らせない読み聴かせ 宮沢賢治編』で令和元年度文化庁芸術祭「放送個人賞」受賞。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』(朝日新聞出版)。
大賞
  • 1. ゆる言語学ラジオ
  • 日ごろ何気なく使っている言葉をぐんぐん掘り下げてみれば、ワクワクするほど面白い世界!言語オタク水野さんの「そういや、ふと思ったんだけどさ…」というセルフ子ども相談室的な疑問から始まり「ふむ、そう言われたらたしかに」とライトな気持ちで聴き始めたら最後、数珠つなぎで好奇心が刺激され、最後まで聴き続けてしまう幸せな知的冒険時間。そこまで調べる⁉️という異常な掘り下げレベルですが、決して講義っぽくならず、聴きにきてくれた人たちをとにかく楽しませたいというトーンや言葉選びも心憎いばかり。堀元さんの「それで思い出したけど、前にこんな本読んでさ」という古今東西からの的確な引用も、さらに理解を深め、関連する本を横断して何冊も読んだようなお得感。これまで何気なく使っていた言葉を「言語」としていかに「面白がる」か。ゆるく優しく教えてくれた革命的な番組です。
  • 2. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
  • 見えないからこそかき立てられる聞き手の想像力を逆手にとった、声のルポルタージュ。頭の中に広がっていくゾクゾクした緊張感がクセになります。
    ただ現場に行って「録る」のではなく、上出遼平氏の柔軟な「聞き手」としての才能なくしては成立しない企画。アンダーグラウンドの世界で生きる百戦錬磨な相手でも、上出Dと言葉を交わしているうちに皆なぜこんなにも胸を開いていくのだろうか。遠い世界で生きているように思えていたけど、いろいろな事情や思いを抱えた同じ人間なんだとふと垣間見える瞬間があって、なぜか共感までしてしまうという。恐ろしい番組です(いい意味で!)。
  • 3. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • ノンフクションであることの地続き感。実際に世界で起きた/起きている事象を、「次の展開は?このあとは?」と、ぐいぐい引き込んでいく演出力。音声エンタメ大国の底力をウットリしながら堪能しました。これでもかと煽ってくる音楽、効果音などの、サウンドデザインも、超一流。語り手としての一之輔さんの新たな真骨頂にしびれました。
  • 総評:
  • 1位:
    「言語に関心を持つ」というと堅苦しくなりますが、「言葉を面白がる!」角度と方法をここまで振り切って語り切れる場というのは、ポッドキャストだからこそ。腕と情熱さえあれば、コンテンツとしてここまで面白く聞かせられるトピックなのか!と、その地平線を切り拓いた功績は大きいと思います。こんなにも楽しいのは、なにより二人が「わーおもしれー!」と楽しみながらというのは全体を通して感じますが、それ以上に、言葉のプロの名にかけて、番組をどう編んでいけばいいのか日々研究しているからなのでしょうか…。そのあたりの制作裏話は鶴の恩返し的にナゾに秘めたまま、今後もこのままのゆるい空気感を楽しみにしています。

    2位3位:
    一瞬にして全くの異世界へ誘ってくれる二作品を。聴感だけで理解してもらうためには、「映像付き」以上に語りのスキルが求められますが、「音声だけ」だからこそさらに鮮やかに際立つ世界観に圧倒されました。

    (こちらの作品も好きでした)
    音声だけの居心地の良さをとことん活かしきっているのが氷川きよしさんの「おかえりごはん」。どこまでもあくまでも普段のまま、その人の気配を感じられる温度感。リスナーを「さあ聞くぞ!」と構えさせず、疲れさせない距離感が絶妙でした。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 奇奇怪怪明解辞典
    2. ゲイと女の5点ラジオ
    3. 叶姉妹のファビュラスワールド
  • 総評:
  • 1位 :
    リリシスト同士の華麗な言葉の技の掛け合いが鮮やか。それもショーアップされたリングではなく、そっと聞き耳を立てている密室っぽい雰囲気こそ音声コンテンツの愉しみ。TikTokから、映画、お笑い、「論破」が流行る時代感まで、今の森羅万象を捕まえて、言葉で輪郭を浮かび上がらせていく天才。二人の関係性がまだわからなかった聴き始めは、「やけに好き勝手に喋っているなぁ」という印象でしたが(ごめんなさい)、お互いの言葉が触媒のように機能し、対象物への精度がぐんぐん上がっていく様子は、次の一手を巡りそれぞれが超絶フル回転しているセッションのようでした。徐々にギアが上がっていくグルーブのような展開に、毎回「最後の落とし所はどうなるのか?どれくらい事前に決まっているのか?もしや完全に即興のアドリブ?」とハラハラしながら、耳が離せません。

    2位
    個人的趣味がとんでもなく先行しているのかと思わせておきながら、ロジックの効いたキレのある言葉で世の中のモヤモヤを真っ二つに斬ったり、遠くから石を投げたり。「そもそも100点中5点の私たちだし」というスタンスもいじらしくて、その小市民な感じに大いに共感してしまいます。けどその舌鋒は、スキあればマウントを取りにくる女、イマドキの女性誌の表紙モデルのチョイスから、カギカッコ付きの「丁寧な暮らし」にいたるまで向けられ、世の中の違和感に嘆いたり、揚げ足取ったり、煽ったり。小気味良いテンポで広がっていく、ちょっと意地悪で愛にあふれるやり取りは、(合う人には)猛烈にクセになります。特筆すべきは、ヴァジャさんの「そんな事象まで目をつけるか!」という鋭い着眼点。そして、しょうちゃんのその話をきれいに受け取り、広げ、リスナーに上手に橋渡してくれるスキル。
    3位
    国民的ゴージャス姉妹二人によるアトラクションのような音声絵巻。すっかりおなじみとなった世界観をしっかり守りつつも、たまに素のお顔もふっと垣間見せてくれるのが、音声ならではのうれしい特典。引き続きこの世知辛い世俗から5センチ浮いているファンタジーな世界を聞かせてください。
ベスト エンタメ賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
    2. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
    3. 生活が踊る歌
  • 総評:
  • 1位:
    普段なら絶対踏み込めないようなちょっとあぶない場所にまで、今いる場所から一気に潜入していくような、実社会サファリパーク体験。夢中で聴いていたら、何度か電車を乗り過ごしました。

    ひとり現場に乗り込んでいる上出氏がまるで怖いもの知らずの戦場カメラマンのような。さらに深いところまで聞きたいという熱さと、相手からどのように話を聞けば良いのかを瞬時に判断する冷静さ。それでいて「丸腰感」がとんでもなくハラハラさせる。まさに上出ノワール。ポッドキャストおいて、さらにその美学で「音声ルポルタージュ」という世界を拡張し続けてください。

    2位:
    普段のラジオ番組では、その肩の力の抜けたトークで楽しませてくれる一之輔さんですが、その話力の凄み!狂言回しとしてのナレーションの表現力、登場人物のセリフにおける憑依力。決して入ることができない「モデルナ」社の会議室から、オックスフォード大学の研究室、NYの華やかなランウェイまで、その現場の景色が見えてきます。ピンと張り詰めた空気感も、ざらざらした手触りも、その匂いまで。耳経由で五感まで発動してしまう没入感がすごい。

    世界クオリティのドキュメンタリーの世界を、日本語版としてアクセスしやすい形で、無料で楽しめるとは太っ腹すぎる。色々な大人の事情があるかもしれませんが、有料コンテンツとしてでも、新シリーズを震えて待ちます。

    3位:
    学生時代、「とりあえずいつも楽しくここで話してるから、ふらっと聴きにきて?」という親しみやすく頼もしい文化系先輩っていましたよね。そんな二人が、音楽や映画などのエンタメから、いま社会で何か起きているかまで、水平&垂直的に掘り下げていく大人のエンタメ部室番組。つい好きなジャンルのものばかり偏ってしまう感性の老化現象に「ちょっと待った!」をかけてくれます。話題にのぼった曲を聴きたくなったら、「はい、プレイリストもあるでよ」と、かゆいトコロに手が届くサービス精神も優しい。
ベスト コメディ賞
  • 1. ザ・マミィのネズミの咆哮
    2. 83 Lightning Catapult
    3. 蛙亭のトノサマラジオ
  • 総評:
  • 1位:
    「声は人柄を表す」といいますが、二人の「最近こんな感じです」という日常の話から、「ふつおた」への返し、お悩み相談まで、聴感上はどこまで行っても「いい人」。で・す・が、スタジオにナゾの楽器を持ち込んで突然弾いてみたり、あまりにも自然にエロ話が始まっていたり、その先の展開が読めないオフビートさに狂気も感じます。自分達の弱みもカッコ悪さも語り尽くす飾らなさと素直さ。カットなしの長尺で聴けるポッドキャストで、その好感度もさらに上がっているのではないでしょうか。私は大好きになりました。フリーな空気の中でも、印象的で聞く人に残る言葉選びも秀逸。

    「話題がない時はスケベ話」とご本人達で言ってますが、それがどんなに「夜の話」になろうと、なぜかイヤな感じがしない二人の空気はすごい強みだと思います。酒井さんのゆるぎない女性へのリスペクトによるもの?林田さんのソフトな語り口?いずれにせよ、お二人の人柄がにじみ出ている安心感。(個人的には、酒井さんのラッパーとしての未来も楽しみでなりません…)

    2位:
    83年生まれで同い年で同期、立ち位置も重なる二人。ギラギラのライバル同士という空気は全くなく「お前のところもいろいろ大変だねえ」的な、違うクラスにいる同じ部活仲間のような関係性が新鮮で楽しい。

    それぞれのホームから離れ、新しい化学反応によって生まれるツッコミやボケの手数や角度も増えているような。聞くたびに新鮮な驚きと、何時間でも聴き続けられる温度感、ちょうどいい抜け感が秀逸です。

    3位:
    どんなに瞬間的に毒づいても、「いい子だなー、いいご家庭で育ってきたんだろうなー」と「よしよし」したくなるイワクラさんの姪っ子っぽい愛されキャラとほんわかしてしまう宮崎弁。中野さんの「近所に住んでいそうな感じのいいお兄さん」的な距離の近さ。蛙亭についてよく知らない人でも、「知らないお兄さんお姉さんのやりとり」としても、楽しそうに日々の出来事を話している様子が微笑ましい。

    なんだかんだで仲の良い男女の友達同士つつき合っている感じが平和そのもの。なんでもない「あのさ、こないだこんな事あったんだけどさ」な会話が、仕事帰りの疲れた頭をほぐしてくれます。
  • Photo: Shunichi Oda
  • 古田 大輔 
    ジャーナリスト/メディアコラボ代表
    1977年福岡生まれ、早稲田大政経学部卒。2002年に朝日新聞に入社し、社会部、アジア総局員(バンコク)、シンガポール支局長などを経て、デジタル版の編集を担当。2015年10月に退社し、アメリカ生まれのグローバルなインターネットメディア「BuzzFeed」の日本版創刊編集長に就任。ニュースからエンターテイメントまで、ソーシャルと動画で急成長し、3年で日本有数の規模のネットメディアに。調査報道やファクトチェック、LGBTの権利やジェンダー平等などの社会課題にも取り組む。2019年6月に独立し、株式会社メディアコラボを設立して代表取締役に就任。ジャーナリスト/メディアコンサルタントとして活動している。2020年9月、Google News Lab Teaching Fellowに就任。
大賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision
  • テレビ版「ハイパー」の面白さは人が行けないところに行って、ありのまま見せるところにありました。音声「ハイパー」のロケ場所は行けないことはない。でも、音声にすることでより取材相手の本音に近づき、人には見えないもの=心をよりハッキリと「見せる」力があると感じました。圧巻です。
  • 2. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • プロが続々と参画するポッドキャストの中でも、切り口と構成が素晴らしい。すでに明らかになっている情報でも、それを音声で飽きさせずに伝えるにはどうしたら良いか。参考になります。 
  • 3. 氷川きよし kiiのおかえりごはん
  • 氷川きよしさんの語りに惹きつけられます。それだけだとベストパーソナリティ賞ですが、ごはんを作るという設定が、この親密さをさらに強めているんだなと思います。愛犬について語る氷川さんの声は完璧に心まで届く。   
  • 総評:
  • 個人や独立系の人たちが着実に力をつけている上に、プロが続々と参画し、今年も全体のレベルはさらに上がったなと感じます。中でも注目したのは「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。テレビ東京の上出遼平さんがディレクター一人、カメラ一つで危険地帯に乗り込んでいく、「このやり方じゃなきゃ撮れないものがある」(本人談、群像2021年4月号)と語る名物番組が元ですが、さらに取材対象に近づくために「映像を捨てる」(同)ことで実現したものです。そこまでして録った音を、ぜひ多くの人に聞いてもらいたい。
    以前、視覚障害者の方に声だけで道案内をする/してもらうというワークショップに参加したことがあります。その時に視覚障害者がどれだけ正確に音で街並みを捉え、一方で視覚に頼っている自分がいかに何も聞いていないか、驚かされたことがあります。音で人に何かを伝える可能性の大きさについて、「ハイパー」は改めて教えてくれました。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 叶姉妹のファビュラスワールド
    2. 奇奇怪怪明解辞典
    3. ゲイと女の5点ラジオ
  • 総評:
  • ベストパーソナリティ賞で「叶姉妹のファビュラスワールド」を推すって、出オチ感があると思う人もいるかも。それでも推したいのは、テレビでは見られない2人の魅力が聞けるからです。テレビでは最大の武器になるファビュラスな外見がポッドキャストでは見えない。でも、常人の世界からめちゃめちゃ離れている2人が、視聴者からの質問や相談に丁寧に答えているところに2人の人柄が見えて、ファンがつくのもわかります。美香さんがエゴサーチして番組に役立てているというのも凄い。そういうこと、絶対やりそうにないのに。奇奇怪怪は2人の掛け合いが最高ですね。音声メディアってリスナーとMCの親密感だけじゃなくて、MC同士の親密感が大切なんだなと気づかされます。2人が会話に夢中になってリスナーが置き去りなのに、その夢中になっている会話を聞かせてくれてるところから生まれる別の親密感、みたいな。ゲイと女の5点ラジオにも同じものを感じます。そういったそれぞれのパーソナリティの中で、リスナーが自分にあうコンテンツを探せる。これも裾野が広がり続けるポッドキャストの良さであり、その中で自分に合いそうなものに巡り合うためにも、こういったアワードって良いですね。
ベスト ナレッジ賞
  • 1. ゆる言語学ラジオ
    2. a scope ~リベラルアーツで世界を視る目が変わる ~
    3. DOMMUNE RADIOPEDIA
  • 総評:
  • 何がその人にとってのベストナレッジかは、人によって全く違うので選ぶのが難しいですね。どれも素晴らしく面白くて勉強になる中で1位に「ゆる言語学ラジオ」を推したのは、ナレッジを伝えるのにはその分野の本当の意味での専門家でなくても良いんだな、と気づかせてくれたからです。学部生レベルで言語学を学んだという水野太貴さんと言語学に詳しいわけではない堀元見さんのコンビが言語学の周辺と周辺ではない知識について楽しそうに語ると、ナレッジが雑談として自然に頭に入ってくる。ポッドキャストって誰かに強制されて聞くものじゃないから、こういう雑談感がある方が知識を身につけやすいのかもしれません。
ベスト ウェルビーイング賞
  • 1. チャポンと行こう!
    2. ホントのコイズミさん
    3. Temple Morning Radio
  • 総評:
  • 結局のところ、ウェルビーイングのために大切なのは気の合う仲間なのではないかと思います。家族だったり、友人だったり、仕事仲間だったり。心地よいライフスタイルを提案しているブランド「北欧、暮らしの道具展」が運営する「チャポンと行こう!」を聞いているリスナーの人たちも、そういう仲間を求めているのでは。好きな生活感が一緒という安心感があるから、リスナーとMCのやりとりの中にも近い価値観を持っているよね、という空気感が流れててウェルビーイングだなと感じます。ウェルビーイング的な生き方を教えるみたいなチャンネルだと、むしろそれはナレッジを伝えるものであり、本質的にはウェルビーイングではないのかもしれません。ホントのコイズミさんも一緒で、小泉今日子さんの考え方、語り口、声が好きな人が聞く、癒しの場になっています(もちろん、僕にとっても)。
  • 美村 里江 
    女優/エッセイスト
    1984年、埼玉県深谷市出身。2003年にドラマ『ビギナー』で主演デビュー。ドラマ・映画・舞台・CMなど幅広く活躍。近年の出演作は『大岡越前』『MIU404』『青天を衝け』映画『空に住む』など。また、読書家としても知られ、新聞や雑誌などでエッセイや書評の執筆活動も行い、複数のコラムを連載中。近著には初の歌集『たん・たんか・たん』(青土社)など。2018年3月に「ミムラ」から改名。
大賞
  • 1. ハイパーハードボイルドグルメリポートno vision
  • 「食事」を中心に据えつつ、音から沁みるドキュメンタリーの真実味。各回のディレクターさんの姿勢をはじめ「あくまで個人の意見です」の排除に拍手!映像版も好きですが、音に集中することで各人物の深遠な存在感に痺れました。蛍や星空を好むカメラマンが、自らのゲス心にハッパをかけて何日も著名人を追いかける…。自宅でケーキを焼く家庭的な夫、その浮気現場に迫る探偵の朝カツカレー…。役者業の観点からも収穫が多かったです。
  • 2. BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ
  • 料理などの家事をしながら聞いていても、気づけば毎回手を止めて耳を傾けていました。時代のうねりが分厚い物語として頭に蓄積され、大作映画並の満足感。
  • 3. 奇奇怪怪明解辞典
  • 日常的なエピソードを次々表現できることの強みと面白さ。「なんか」が必要とされる思考の二塁ベースの話など、わかる!の連続で大変爽快でした。
  • 総評:
  • ●「ハイパーハードボイルドグルメリポートno vision」は映像版も好きですが、音に集中することで各人物の深遠な存在感に痺れました。蛍や星空を好むカメラマンが、自らのゲス心にハッパをかけて何日も著名人を追いかける…。自宅でケーキを焼く家庭的な夫、その浮気現場に迫る探偵の朝カツカレー…。役者業の観点からも収穫が多かったです。

    「ハイパー〜」が深さだとするとこちらは厚み。●「BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ」は全5-6話、2時間超えだからこその情報量。誰もが知る有名企業やニュースの裏のドラマに春風亭一之輔さんの声がピッタリ。

    ●「奇奇怪怪明解辞典」はまさに雑談の醍醐味。日々の出来事や身近な関係を語るだけでこんなにも楽しく、その中でリスナーに直通する瞬間も多々あるのが嬉しい。(書籍版も○)

    実用度は間違いなくNo. 1!●「氷川きよし kiiのおかえりごはん」。感化されそうめんチャンプルーを作り、「あけがらし」も購入、秘伝のごまダレも真似してます。調理の音も心地よい。

    すぐ他の人に話したくなる未知の面白エピソードばかりで、ナレッジ部門ダントツだった●「ゆる言語学ラジオ」すら3位内から溢れるとは…。今年の大賞作品群の充実ぶりを再実感した次第です。
ベスト パーソナリティ賞
  • 1. 月曜トッキンマッシュ
    2. ゲイと女の5点ラジオ
    3. 叶姉妹のファビュラスワールド
  • 総評:
  • ●「月曜トッキンマッシュ」
    突出したリラックス感は長年やっているからこそのものでしょうか。特に#16、具体的エピソードの連続で解像度がメキメキ上がった「実家あるある」は、パーソナリティの方々と世代が近いのもあって大笑いしました!
    ●「ゲイと女の5点ラジオ」
    まずお二人の声質が明るく朗らかで素敵です。そこに毒気が入るバランスが絶妙で、終始和やかに聞き終わり、後でふと細かなディテールを思い返し、すごい題材だったよな…と我に返る回も多々ありました。
    ●「叶姉妹のファビュラスワールド」
    入りの効果音からワールドを存分に感じつつ、リスナーからの質問を安易に扱わず、真摯に丁寧な言葉遣いで答える様子。お二人のゆったりした話し方に落ち着いた気持ちに。寝る前の時間にぴったりですね。
ベスト ナレッジ賞
  • 1. ゆる言語学ラジオ
    2. NIKE LAB RADIO
    3. コペテンナイト
  • 総評:
  • ●「ゆる言語学ラジオ」
    ここまで一冊の本について理解した上で面白さを語れるのは、読書好きとして憧れます!一本大きな道筋の歩を進めつつ、関連する書籍や研究者の逸話が次々出てくるので、読んでみたい本メモが嵩みました。
    ●「NIKE LAB RADIO」
    それぞれの分野で邁進を続ける方々は、やはりどこか共通項があるんだなと実感。talk#5は伊藤さんも梅原さんも著書を読んでいたので口語との違いも楽しく、バーチャルフェンシングやってみたくなりました。
    ●「コペテンナイト」
    宇宙再発見プログラムというコンセプトと、お二人の話し方のマッチングが素晴らしい。話し方や笑い方を気にされる様子も可愛らしかったですが、ごくごく自然な話ぶりで、宇宙がより身近に感じられました。
ベスト ウェルビーイング賞
  • 1. ウェルビーイング〜旅する博士と落語するアナウンサー〜
    2. Temple Morning Radio
    3. チャポンと行こう!
  • 総評:
  • ●「ウェルビーイング〜旅する博士と落語するアナウンサー〜」
    研究するジャンルの奥深さからご自身を専門家にはなり得ないという石川さんと、興味深く聞き出す吉田さんのコントラスト。とことん色眼鏡を外していった先に何が見えてくるのか。第16回メタボ列車の話はまさに落語のような流れですね!
    ●「Temple Morning Radio」
    甘いものなし生活1週間後の羊羹、ゲーム漬けの学生時代…。お坊さん達のお坊さん以前〜修行中のお話がどれも楽しく。日替わりのフレッシュなお経の数々も、内容の紹介から入るので朧げにでも意味を感じられるのが嬉しかったです。
    ●「チャポンと行こう!」
    読書の話の中で「ある本を読み始めた時の執筆者の年齢に追いついた」話に大共感!等身大のお話をゆっくり咀嚼しながら聞けるので、心と頭に実感がじわじわ心地よく広がりました。「現在の自分にとっての”勇敢”さ」の話は覚えておきたい。
Spotify NEXT クリエイター賞
  • ■ きえはる心理学ラジオ
    ■ マンガ760
    ■ 結婚したい乙女たちのアダルトーク
    ■佐々木亮の宇宙ばなし
    ■すごい進化ラジオ
    ■ワインの輪
  • Spotifyは、世界最大のオーディオストリーミングプラットフォームです。320万以上のポッドキャスト番組や、8,200万曲以上の音楽を、いつでもどこでも楽しむことができ、一人ひとりに合ったおすすめや体験を通じて、リスナーとクリエイターとの新たな出会いを創り出しています。
    ポッドキャストについては、現在世界中で魅力的なコンテンツの開発や、ユーザー体験の向上、クリエイター支援に大きく力を入れていますが、日本においてもポッドキャストのさらなる普及を目的に、次の時代を担う音声クリエイターを発掘し、データやナレッジ、プロモーション機会を提供することで、彼らがリスナーを増やし、キャリアを形成できるようにサポートする「クリエイター・サポート・プログラム」を昨年1月立ち上げ、今年に入ってからは1億円の追加出資を発表いたしました。
    本日これより発表させていただく「Spotify NEXT クリエイター賞」も、これらの一環として、才能あるクリエイターにいち早く脚光を当て、彼らの活動を支援する目的でJAPAN PODCAST AWARDS内に昨年開設させていただいたものです。
    今年は、自薦他薦のあった作品から、Spotify上でのリスニングデータとエディターによる専門的視点の双方を加味し、特に将来性に期待する6組を選ばせていただきました。
Amazon Music presentsベストコメディ賞
  • ■83 Lightning Catapult
  • Amazon Musicは国内外問わず、新譜から旧譜まで、豊富な音楽セレクションをiOSやAndroidのスマートフォンやタブレット、パソコンなど様々なデバイスを通して提供しています。Amazon Musicのすべてのストリーミングサービスで追加料金無しでお聴き頂けるポッドキャストと音楽及びカルチャーの体験がこれまで以上に簡単で楽しくなりました。
    Amazon Musicでは、クリエイターサポートの一環として、先日「Amazon Music Studio Tokyo」を渋谷に開設致しました。
    日本のアーティストやクリエイターの皆様に、自由に創造性を発揮していただいく場として提供し、そこから創造される魅力的な楽曲やポッドキャスト番組等のコンテンツを通じて顧客体験価値を高めてまいります。
    また、番組制作に留まらず、ファンやリスナーとの繋がりをより強固にするイベントやファンミーティングを行う場、そして渋谷というロケーションにふさわしい新しいカルチャーの発信地として機能させながらクリエイターのコミュニティーをサポートして参ります。
    今回「JAPAN PODCAST AWARDS」内に「Amazon Music presentsベストコメディ賞」を新設しました。
    新型コロナウイルス感染症の影響によりここ数年大変な時期が続いていますが、日本には数多くの素晴らしいコメディー文化とクリエイターたちが存在します。Amazon Musicはポッドキャストを通してより多くの人に楽しい体験と笑いを届けることで日本を元気にする活動をするクリエイターたちを応援するために今回Amazon Music presentsベストコメディ賞を新設いたしました。